広島、長崎への原爆投下の日から終戦記念日までの8月の10日間は、
毎年、日本が世界を巻き込んだ悲惨な軌跡に気が重い。
当時のリーダーに国を導く能力が欠如していたことは、歴史の上で明らかだ。
民主国家では国民の意を国政に反映するために代表者を選出し、彼らに政治を委ねる。
政治家は一般の国民より政治に長けているべき人たちだ。
ここに課題が二つある。
一つは国民が適格な人材を選べるかという選択の問題。
もう一つは、そもそもそのような人材がいるかという存在の問題だ。
前者は選挙制度と我々の投票行動・選択眼の問題、
後者は政治家個々人の問題というより、その国の政治家を輩出する仕組みの問題と捉えられる。
残念ながら、今の日本には、信頼に足るプロの政治家を輩出する社会システムがない。
日本が世界に誇れるプロ輩出システムと言えば、野球選手だ。
日本には地域に無数の少年野球チームがあり、
野球好きの少年は、中学、高校とクラブ活動で野球を続けて、甲子園で全国制覇を目指す。
その後ドラフト会議で指名されれば、プロへの門戸が開ける。
日本で野球選手になりたい男児は、ほぼ全員がこの網の中に取り込まれる。
これほど効率的で効果的なプロ輩出システムはない。
日本人がアメリカの大リーグに移籍して活躍できるのは、この社会システムがあるからだ。
政治の世界にはこの仕組みがない。
政治家の場合は、必ずしも子供のころからの育成が必要とは限らないが、
適格な政治家を輩出する社会システムは、国にとって不可欠だ。
先ずは、大学に国の運営に関する専門コースを設けてリーダーシップ教育を拡充すること、
一般人が政治を志す際の専門知識の修得とキャリア開発を支援する仕組みを整えることだ。
現状は、二世議員候補が親の選挙地盤を受け継いだり、
政治知見に乏しい有名人が党の議席確保のために候補者に担ぎ出されたり、
一時の社会現象や特定の総理大臣の人気にあやかって、政治家になったりする。
派閥力学から、担当分野の知識がほとんどないにも関わらず大臣になる人もいる。
これでは、外交どころか、国内の課題にもまともに対処できないだろう。
国の政治リーダーが適格な能力をもっていなければ、国家と国民の行く末を誤ることになる。
75年前の8月の10日間は、その結末を克明に物語っている。
二度と同じ轍を踏まないためには、
信頼に足る政治家を輩出する社会システムを持つことが必須である。
コロナウィルスの感染が拡大し、社会不安が増大している。
政府の対応にも、国民の十分な納得が得られていないのが現状だ。
この問題に対して国がすべきことは、明らかに以下の3点だ。
① 国民全員が2週間に1度PCR検査を受けられる体制を早急に確立し、受検を義務化する。
② 陽性者を軽症・無症状者、中等症者、重症者の3グループに分けて、療養、治療ができる施設と医
療体制を整備する。
③ ワクチン、治療薬の開発を支援する。
②と③は実施の途にあると理解している。
問題は①で、現在のように単に「PCR 検査数を出来る限り増やす」ではなく、
国の負担で「国民全員にPCR 検査を定期的に実施する」ことが肝要だ。
このために必要な法改正を速やかに行う。
頻度は先ずは目標として2週間に1回としたが、状況を見て調整する。
ウィルス感染の本質的な問題は、3密でも、夜の街でも、カラオケでもない。
市中に感染者が一定の割合で存在すること、そして、その存在が見えないことだ。
①と②を実施することで、
陽性者は日常の社会活動から離れて症状に応じた治療を受け、
陰性者はこれまで通り社会・経済活動を続けることが出来る。
PCR 検査の精度が100パーセントではないことが指摘されているが、これは2次的な課題だ。
7~9割の陽性者が特定され、市中、職場、家庭などから隔離・保護されれば、
ウィルス感染は大幅に減少するだろう。
もちろん、一定の割合で偽陰性者が存在することを考慮して、
公共の場では引き続きマスクの着用などの対応は必要だ。
その間に、PCR 検査法を改良したり、抗原検査を組み合わせたりするなどして、検査精度上げる。
政府は、Go To トラベルキャンペーンや持続化給付金など、これまでに多大な努力を払っている。
しかし、休業要請と給付金と経済刺激策を繰り返していても、本質的な解決にはならない。
このままでは国の財政が破綻する恐れも生じる。
国には、是非①と②に集中して国費を使うことを切望する。
そうすれば、感染拡大も収束に向かい、経済も健全に動き出すだろう。
健康と経済を両立させ、国民の安心・安全のために国がすべきことは明らかだ。